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編集補助: さくさく
ご存知の通り「違い」とは人生にスパイスを与えるための必要不可欠な事柄です。このコントラス トのおかげで思考、言葉、行動のいずれにおいても、その境界が明白になると思います。今日の 社会では、調和のとれた共存が理想とされていますが、時には対立も必要ではないでしょうか。 もちろん、異質なものを武力で攻撃するというような敵対的な対立のことではありません。この 「違い」の尺度を利用して、数年前から、しのりゅーさんは相反する2つの概念の対立をテーマにしたコンピレーションを企画されています。今回は、「光と闇」というクラシックなテーマを取り上げ ています。では、「光のチップチューンVS闇のチップチューン 対決コンピレーション2」を見てみましょう。

Light Side
この世界で心地良さほど価値のあるものはありません。私たちの中に満足感を生み出すもの や、快楽主義的な熱狂に近づけてくれるものは、別の次元で高く評価されます。「Starry Scorpio」 はそれに該当します。柔らかなハーモニーは、耳を優しく撫でるように滑り、心を温かく包み込むように溶けていきます。この曲から溢れ出る甘さは卓越しています。Julie Wataiさんの歌声は、穏やかで優しさに満ちたオーラを放ち、歌詞に深みを与え、作品をより素晴らしいものにしています。確かに、DELT▲TUNesは素晴らしい作品を生み出してくれました。ずっと聴いていたい曲の一つです。
時には“Less is more”が良い場合があります。チップチューンのシーンでは、往年のゲーム機の限られたリソースを最大限に活用している方々がいます。チップチューンの作曲において、必ずしも技術的なリソースが重要なわけではありません。「Timer 0Ff」でトラ大河さんが証明してくれるのは、技術的な側面と同様かそれ以上に、メロディック的な側面が重要だということです。なぜなら、最も美しい音の物語が編まれるのは、メロディーの中にある遊び心が必要だからです。その点を意識して、純粋なメロディーにどこか無邪気な雰囲気を漂わせています。メインテーマの柔軟性で感情の限界を探り、リスナーが全身で体験できる既成概念にとらわれないトラックを生み出しました。それはまるで魔法のようです。
音楽の世界では、卓越した才能と天才的才能を区別する微妙な境界線を注意深く識別することはあまりありませんが、月見里みつきさんの「終ニ座ス星ノ神」では、音楽的に洗練された境界線に達するための曲の構成をレクチャーしてくれます。曲の最初から、そのための重要な要素の1つである方向性が明らかになっています。それは明確で非常に確立されています。標的に命中するまで止まらない矢のような鋭さで進んでいきます。それだけではなく、カラフルな音色は多様であるにもかかわらず、曲のオーラに統一性があり、リスナーの気を散らせることなく、逆にハーモニーの良さやメロディーの淀みなさを際立たせています。この曲は音楽的ストラクチャーの素晴らしい一例です。
光はポジティブなもの、良い波動を放つもの、心を育むものを運んで来ます。今回は同じ光の中にも、風景を豊かにする様々なトーンが広がり、私たちの目に映るものに活力を与えてくれることが示されました。このコンピの光サイドでは、BEEPBOYさん、ウラボロシさん、しのりゅーさん、蒲山(Kabayama)さん、wool poolさんなどの曲を聴くことができます。これらの素晴らしい作品は耳を傾ける価値があります。
Dark Side
暗闇への恐怖は私たちの遺伝子の中にあります。人類が誕生して以来、私たちは常に暗闇の中にあるものに怯えてきました。この現象を説明してくれるのが、やまもとうふさんの「Black Alley」だと思います。絶え間ないテーマがオスティナートのような技法で現れます。このような旋律の繰り返しは3分以上に渉り、聴き手にプレッシャーを与え、じわじわと迫り来る形になっています。この不安を与える雰囲気は、威嚇するようなパーカッションと時々繰り返されるリズミカルな高音によって補完されます。確かに少し不穏な感じですが、頭の中にイメージが浮かび上がるような作品です。
桑田さんは暗闇の戦いに最適な曲の、新しいレベルを提供してくれます。「Deadline」では“対立”という言葉から想像されるような闘争的で攻撃的な雰囲気が感じられます。ベースを中心とした疾走感のあるリズムが曲をコントロールし、奔放かつ安定したペースで前進し、激しいメロディーが戦闘に向かうための活力を現しています。パワフルなドラムのアクセントは、想像力を搔き立てられます。前述の要素をベースに、まるで空戦ゲームのような華麗なソロが展開されます。この曲はこれからもずっと頭の中に残るでしょう。
秩序とバランスを保つことは人類の誕生以来取り組んできた課題の一つです。何かを構成する要素の中で“違い”を見分けるために特定の条件が存在することは、それを理解する上で必要となります。「Lost in Hauntedtown」は明確なメロディーラインと、ディストーションやその他のエフェクトを優先した背景を対峙させることで、混沌と調和の境界線の曖昧さを現している感じがします。この作品では、リズムが重要な要素であり全ての中心になっていて、市ノ宮アキハ(A.I.E.S.S.)さんが最も楽しい方法で、私たちを自由奔放な世界へと導いてくれます。
闇は光と同じように、それを拒んだとしても私たち全員の中に存在しています。闇サイドのアーティスト達が提供してくれるのは、このサイドに対する彼らのビジョンであり、制御された環境の中で、それがどのように現れてくるかを表現してくれます。全ての解釈はリスナーに委ねられていますが、各トラックの背景の要因は非常に明確だと思います。全ての作品は素晴らしい完成度です。闇サイドではscytheさん、M/Sさん、2Pcolorさん、HIMAGOさんなどの曲を聴くことができます。
年々、チップチューンのコミュニティの運命は常に視野を広げていくことだと思うようになりました。これを実現できるのは、しのりゅーさんのような方々の活動のおかげです。チップチューン音楽の境界線はその始まりから曖昧で、音楽界の最も意外なところに溶け込み、誰でも創造的な活動が出来るようになりました。このことは間違いなく最高なことだと思います。このコンピを企画しただけではなくマスターリングとプロモーションも担当してくださったしのりゅーさん、また、楽曲を提供してくださったアーティストの皆さんに感謝申し上げます。このような取り組みがこれからも続いていくことを願ってやみません。
この記事を読んでいただきありがとうございました。またお会いしましょう。
novtos: Bandcamp
しのりゅー: Twitter | Soundcloud
DELT▲TUNes: (牧歌電子) Twitter | (Julie Watai) Twitter
トラ大河: Twitter | Soundcloud
月見里みつき: Twitter | Soundcloud
やまもとうふ: Twitter
桑田: : Twitter | Soundcloud
市ノ宮アキハ(A.I.E.S.S.): Twitter | Soundcloud
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